suzu@kick diary

とあるキックボクサーの九転び十一起きな物語が現在、進行中です。

ひとはみな、あまねく照らされている

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日が暮れる前、傾きはじめた日の光は柔らかくて暖かい。

公園のベンチに座り背をあずけて、しばらくの間、目をとじる。
柔らかい光に包まれて、疲弊した身体がほぐされていく。
日中はあんなにもつよい日差しだったが、今は違う。
心地よい気温と身体を吹き抜けていく風。
じんわりと暖められる気持ちよさに思わずため息をもらす。眠ってしまいそうだ。
大きく伸びをして、目を開けた。

行く人よりも帰る人のほうが多いこの時間。
子ども達は遊び疲れてまた明日と言って手を振って別れた。
仕事を終えたサラリーマンも今日の早い帰宅を喜んでいるようだ。
買い物袋をカゴに積んだ自転車をこぐ母親は家路を急ぐ。

彼、彼女らの背中にも暖かい光が降っている。
背中は光に輝き、影は長い。
昼間の緊張から開放されて、身にまとった鎧が風に流されていく。
今日の一日の疲れをかかえて、家族や恋人が待つ家へと帰るのだろう。

「ひとはみな、あまねく照らされている」
藤原新也の『メメント・モリ』に綴られている言葉だ。
雲間に輝く夕日の写真にその言葉が添えられている。
「ひとはみな、あまねく照らされている」
目の前を通り過ぎる人々を見ながら、その言葉を思い出した。

太陽の光はだれもが享受できるもののひとつ。
分け隔てない光はひろく世界を照らし、生活を人を浮かび上がらせる。
そして不確かなりにも地に足をつけて、僕もこの生を営むことができるのだ。

日の光をうける手と足をみた。今日の練習を振り返る。
疲労とだるさを感じるが、やりきった充実感もある。
今日も全力で走って全力で蹴って全力で闘ったな。

よし、僕もそろそろ家に帰ろう。
もうすぐで日が暮れてしまうその前に。