suzu@kick diary

とあるキックボクサーの九転び十一起きな物語が現在、進行中です。

小さなコーヒー屋

これまで日本のさまざまな地をバイクや高速バス、
電車、時には飛行機で訪れた。
ここ数年はまとまった休みがないので旅はできないが、
また訪ねたいと思う街の一つに金沢をあげたい。

金沢には伝統工芸品とか和菓子とかお寿司など、
日本の伝統美に触れることのできる機会が多く、
思わず見入ってしまうものや、日本の慎ましやかな
美意識にため息をもらす場面がたくさんあった。

昔からの家々が連なる石畳の路地を歩いていると、
ここに住んでいる人々はこの街を愛し、
代々受け継いで次につなげようという気持ちを抱いて
住んでいるのだなと思わせてくれた。

屋根瓦を敷き詰めた木の家屋はどれも威厳のある佇まいをしていた。
それらをよく見てみると古くても、しっかり手入れされ、補修をしながら
大切にされてきたもの特有の、深みや味わいが随所に見て取れた。

都会的で華やかなデパートやレストランが並んでいる
大通りは多くの人々が行き交い、賑わいをみせていたが、
そこからちょっと小道に入ってみると、
ゆっくりとした時間の流れに変化する。

そこには小さい個人商店が点在していた。
可愛げな看板を掲げていて、
奥にきっと店主が椅子に座っているのだろう、
昔からの時間のなかで静かに営業していた。

進む足は自然、路地から路地へとさまよい
目を楽しませてくれる風景に出会っては
つい奥へと誘われるように探検を楽しんだ。

味のあるレトロなお店で猫が昼寝していたり、
どこからからポップな音楽が聞こえたり、
子供たちがワイワイ路上で遊んでいたり。

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その土地の記憶はその地でどんな人に会い、
どんな印象を持つかで大きく変わる。
ささいなことでも、それが自分にとってうれしかったり、
気持ちが良かったりするだけで、
その街は一段と好きになるものではないだろうか。

金沢の駅はずれにあった小さいコーヒー屋でのこと。
朝のコーヒーをそこで飲もうと決めて店内に入った。
本当に小さくてこじんまりとしたお店。
コーヒーを飲んでいたとき、主人が話しかけてくれて
東京から来てくれたことを喜んでくれた。
「あそこは行ってみた?ここも行ってみなよ、これもいいよ。」
お祭りがあってそれに行けなかったことを知ると
とても残念そうな顔をしてくれた。
「また遊びにきてね。」
初めての場所で勝手もわからない僕にうれしそうに話しかけてくれた。
よそ者である僕を受け入れてくれたことが、
何よりもうれしかったのを覚えている。

お店にいたのは少しの時間のことであったが、
金沢を楽しんで帰京してほしいという店主の気持ちが
その後の金沢での滞在をより良いものにしてくれた。

遠い日の金沢での出来事を思い浮かべるとき、
帰る電車の出発時間がじりじり迫る中、
時計とにらめっこしながら食べた念願のカウンターでの
お寿司が大層美味しかったことと同じくらい、
このコーヒー屋を思い出す。