suzu@kick diary

とあるキックボクサーの九転び十一起きな物語が現在、進行中です。

『GOGOモンスター』松本大洋

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小学4年生のユキとまことが、春から次の春を迎えるまでの一年間がこの本の中で描かれている。
子どもの心を思いださせるような、あるいは取り戻せるような不思議な物語。

ユキは大人には見ることができないあっち側の世界を見ることができる。
それは子どもでも皆が見ることができるわけではない。
夜、校舎の屋上でハーモニカを吹くと、あっち側のヒーロー、スーパースターがユキに会いに来てくれる。
音に合わせてグルグル踊るスーパースターがユキは大好きだ。

周りの生徒はそんなユキをみて、おかしいやつだって馬鹿にするけど、まことはそれが嘘だなんて絶対に思わない。
まことはなんのフィルターも通さないで世界を見ることができて、その瞳はとても綺麗で、優しい心根をもっている。

空たかく飛ぶ飛行機をみて、「あの飛行機はどこへ飛んでいくんだろう」と想像するユキと、「どこから帰ってきたのかと思うんだ」と答えるまこと。

そんなユキとまことは用務員のガンツさんと一緒に花壇に植えてある花や木の世話をしたり、あっち側の世界にいる悪いやつらにいたずらされたりしながら、小学校生活は進んでいく。
二人が吹くハーモニカのように、様々な声や音がめくるページ毎に弾けながら子ども達の世界が活写されていく。

ここで描かれているユキとまことが過ごす時間は、僕等大人のあっけなく過ぎ去る時間とは濃さが全く違うものだろう。

目に見えるもの、耳に聞こえる音だけが全てではない世界。
豊かな感受性を土台に新しいものを吸収し、楽しいと思うことを心から楽しみ、世界は鮮やかさをどんどん増していく。子どもたちはそんな世界に生きているのだ。

ユキは大人になることを拒絶し、大人になんか絶対なりたくないと願っていた。
大人になると脳みそがカチコチに固まって、内臓がぐちゃぐちゃになってしまうんだと言って。

だけど、時が積み重なり子ども達はみんな、やがて大人になっていく。
それは望む望まないに関わらずだ。

ふと、僕がこれまで生きてきた道程を振り返り、思う。
いつ、僕は大人になったのだろうかと。

小さかった僕は、虫があんなに大好きだったのに、今はもう、触れることができない。
家の中で花火を打ち上げられる家を建ててあげるなんて言っていた僕はどこにいってしまったのだろう。
あの頃は、早く大きくなって大人になりたいと思っていたのか、それともずっと今の子どものままがいいと願っていたのか。
それすらも、もはや忘れてしまった。

想像する。小さかった頃の僕が、もし僕の目の前に現れて、こうやって大人になった自分自身を見て、なんて言うだろうかって。
かっこよくやってるじゃんと少しでも、ほんの少しでもいいから、そう思ってくれたら嬉しい。

少し脱線してしまったが、『GOGOモンスター』この物語は最後、ユキとまことの二人が、止まれと書いてある交差点を自転車で突っきって、その姿が見えなくなって終わる。
読んでから時間が経っているけど、この最後の場面がいつまでも頭のなかに残っている。

少しだけ大人に近づいたユキとまことが乗る自転車の先に広がるのは、初めてだらけの世界に驚きながらも、たくさんの色が降りそそぎ溢れる世界だ。
そして、それは忘れてしまっただけで、大人になる前の僕らも間違いなく通ってきた世界でもあるのだ。

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