suzu@kick diary

とあるキックボクサーの九転び十一起きな物語が現在、進行中です。

海の近くの映画館

逗子の海の近くに小さな映画館がある。
名前はCINEMA AMIGO(シネマアミーゴ)。

映画館と聞くと大きい建物に大きなスクリーンが設置されて、ゆったりした椅子が何列にもわたって整然と並んでいる、そんな絵が浮かんでくるけど、そこの映画館は違う。

海岸近くの住宅地の中に建っている木造の古い一軒家が映画館となっているのだ。
知らずにそこを歩いていたら、え、今の映画館だったのとうっかり素通りしてしまうような、そんな感じの映画館だ。
海岸近くとあって、そこからゆっくり歩いて5分もいけばビーチに出る。

僕はその日逗子にいて、一通り観光した後、その映画館で上映している観たい映画があった。
まだ上映開始まで時間があったので、ビーチに行き、波打ち際を散策することにした。

この日は快晴、日差しは攻撃的であった。

ずっと遠くの方まで続く海の上は光の反射が埋め尽くし、人もカモメもパラソルも浮き輪も見えるもの全部が日差しに照らされて、まぶしいくらいだ。
直視できない日差しに背をむけるように歩いた。
泳ぐつもりはなく来たので、バシャバシャと海に入っている人をみるとなんとも気持ちよさそうに見える。

そろそろ映画が始まるかなという時間になり、戻って映画館に向かった。
時間は夕刻に近く、日も傾き始めてきた。
さっきまでの焼きつけるような日差しに、肌がヒリヒリする感じが残っている。
その上を海風が柔らかく撫でるように吹くと気持ちが良い。

波の音を耳に残したまま、映画館の階段を登った。
扉の上にはCINEMA AMIGOと書かれた照明に明かりが灯っている。
その扉を押して、劇場内に入った。
店内を見渡すと、席は全部で15席くらいだろうか。
古い木製の椅子が並べて置かれていて、飲み物や軽食をおくテーブルが椅子の前に置いてある。
スクリーンは大きいわけではないけど、小さいこの映画館には十分な大きさだ。
小学校の道徳の授業とかで映画を観るときに使われるようなスクリーンのサイズと似ている。
大きく鼻で遠慮がちに息を吸ってみると、木の香りのする空気が身体を満たした。

席について映画が始まるのを待つ。

エアコンか外の風なのか、足元にひんやりした風が抜けていくのが感じられた。
静けさに包まれたまま時間が流れること数分、スクリーンにジジっと電気が通った。
そして、劇場内に光りと音が一気に弾けて、広がっていく。

僕の瞳がスクリーンと一体となり、僕は夢中になって映画を観る。
スクリーンの中で繰り広げられる動きを追っていくうちに、現実を離れて映画の中の世界へと入り込んでいた。
お客さんは前の席に一人座っていたけど、もう誰も周りにいない僕だけの世界。
劇中の声や仕草に引き込まれ、一緒になって登場人物と思いを共有していく。

きっとシモンは寂しかったはずなのに、、、自分は里親にもらわれず、、、、でもズッキーニが幸せになることを願ってあんなこといったんだな、、くう、優しいじゃないか、、、あんなにも仲間のことを思っていたシモン、、かっこいいぜ、、、、、辛いときも哀しみに襲われても負けるな、、、等々思わずにいられない。

様々な登場人物によって様々な感情が揺さぶられる時間はあっという間に過ぎていく。
上映が終わってしまって、現実の中に目を覚ました。
場内は元の静けさを取り戻していく。
スクリーンは真っ白くなって、もう今日の音は休みに入ったようだ。

手を上にあげながら伸びをして、椅子から立ち上がる。
映画館を出ると、涼しくなった夜空に星たちが控え目に散らばっていた。

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逗子に咲く花をパシャリ